懐かしいコート
今から13年前、このコートを着て
桜舞う道を歩いた。
パート仕事で必死に貯めたお金で、
大学院生になった。
58歳の時だった。
叔母がくれたお祝いのお金で、
このコートを買った。
歳を考えると、祝いって、恥ずかしいような気もしたが、素直に喜ぶ自分がいた。
二校受験して、本当は私学の外大に行きたかったけど、授業料が高くて諦めた。
そして、車で二時間近くかかる辺鄙な国立を
選んだ。
指導教官とは、相性が悪く、途中で脱落しそうになったけど、踏ん張って通った。
修論を書き上げたのは、
三年後の60歳の春だった。
入院していた母に、真っ先に卒業証書を
見せに行った。
母は、ベッドに寝たまま、
バンザイして、拍手してくれた。
もうヨレヨレになってしまったコートだが、
まだしばらく置いておくつもりだ。
私の杖のようなものだから。
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